マスク着用が任意に 介護現場の対応は?
2023.3.23(木)
フリーライター 西岡一紀
介護施設内は引き続き「着用が望ましい」
政府は新型コロナウイルス感染症対策として屋内や人の多い場所での着用を推奨してきたマスクについて、3月13日より「屋内外ともに着用は個人の判断とする」としました。
電車やバスなどの交通機関内や医療機関・介護施設内では引き続き「マスク着用が望ましい」としていますが、介護関係者の中には「利用者、スタッフ、来館者にどこまで着用を求めていくのかの判断が難しい」と頭を抱えているところも多いのではないでしょうか。
今月上旬に、大阪府内の介護事業者に13日以降のスタッフのマスク対応について話を聞いたところ、以下のような答えが返ってきました。
「元々、医療・介護従事者は必要に応じてマスクをしてきました。今後は、コロナ以前から着用をしてきた場面では引き続きマスク着用を求めますが、それ以外は強制せず、マスク無しでの勤務も可能にします」
見学者や出入り業者についても「入口近くの個室でスタッフと打ち合わせのみ」「入居者と至近距離で会話する」など、来館者の目的や立ち入る場所などに応じて、マスク着用を求めていくかどうかを判断していくとのことでした。
ただし、この3年間常にマスク着用で業務をしてきた結果として「コロナ前はマスク不要だったが『ここはマスクをした方がいいだろう』と思える場面が出てきた」とのことで、具体的な例としては利用者とスタッフの顔が近づく食事介助を挙げていました。こうしたコロナ禍での経験を元に、新たな「着用すべき場面」「しなくてもいい場面」を細かくルール化していくとのことです。また、単に「マスク」ではなく、不織布マスクやn95マスクなど、場面に応じて着用するマスクの種類も変えていく予定です。
会社・スタッフともに手間は増えるが
このように、これまでの「一律着用」といった対応に比べると規定・運用が細分化されることになり、会社・スタッフともに手間がかかります。それを考えると「これまでの対応でいいのでは」という声もありそうですが、この会社の社長は、「ケアの場面においては、マスクで表情が見えないことのマイナスの影響は大きい」と語ります。
また、コロナ禍でもっとも大きく変わったのが「体調不良時に仕事を休むかどうか」の判断基準とのことです。これまでの「人手不足なので多少体調が悪くても頑張って働く」から「体調が悪かったら仕事を休む、帰宅する」という意識に会社・スタッフ共に大きく変化したそうです。特に咳については「絶対に軽視しない」とか。そのため全スタッフに対する出勤後の健康チェックは今後も継続して行っていきます。
一気に「マスク外し」が進む中で、「私たちは、まだ感染防止に神経を使わなくてはいけないのか」と気が重くなる介護職の方もいるかと思います。しかし、医療職はコロナに関係なく、マスク着用などの感染防止策を実践してきました。それは「世の中に安心・安全を届けたい」という使命感の表れです。介護職もその目的に向かって、医療職と同じ使命感とプライドを持って業務に当たることが求められているのではないでしょうか。

西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。