介護現場でも「面会制限を無くした」など日常が戻りつつあるのではないでしょうか。
「3年ぶりに花見をした」など本格的なレクリエーションを再開したところも多いと思います。
しかし、多くの介護事業所では3年間本格的なイベント・レクを実施してこなかったことから、経験の浅いスタッフの中には「レクの方法を知らない」という人もいると思います。
それどころか、開設して日が浅い事業所では「本格的なレクは初めて」というケースもあるかもしれません。今回は「レクの企画・実施」のポイントや注意点を改めて確認します。
介護事業所向けに、レクを紹介するサイトや書籍があります。しかし、これらは「一般的に親しまれるレク」であり、事業所によってはそのまま活用できない点には注意が必要です。
ある地方都市の高齢者住宅では、地元の民謡や音頭を皆で歌うレクを企画・実施しましたが、全く楽しんでいない利用者が数名いました。彼らは、子や親類の「呼び寄せ介護」でこの街に来た人たちでした。つまり、地元の歌を知らず、歌えなかったのです。
近年、介護事業所を利用する高齢者は多様化しています。若い頃に海外に渡ったが「最後は祖国で」と帰国して高齢者住宅に入る人もいます。
また、日本で生まれ育ったが、両親ともに外国出身で、いわゆる「家庭の味」や「子どもの頃の遊び」が異なる高齢者もいます。プライバシーの観点から、こうした点にまで踏み込むのは難しいでしょうが、可能な限り個々の事情を斟酌して「仲間外れ」を生まないレクを目指しましょう。
いくら良い内容のレクでも、利用者が前向きに取り組まなくては意味がありません。
複数のデイサービスを運営する介護事業者では、ADL維持・改善を目的に、全事業所で体操をしています。しかし、一部のデイでは、「やりたくない」という利用者が多く、効果もあまり見られませんでした。「全部のデイで同じ動画を見て体操しているのに、なぜ差が出るのか」と不思議に思った社長は、実際の様子を視察しました。
利用者の意欲が高く、効果も出ているデイでは「この体操を毎日していれば、半年後には旅行に行けるようになります」など、参加者に具体的な目標を抱かせ、モチベーションを維持させる声がけを行っていました。
一方、利用者の意欲が低いデイでは「自分でトイレに行けるようになります」と声がけをしていました。おそらく担当者は、何気なく言ったのかもしれませんが、利用者に「私は自分でトイレに行けない」という現実を突きつけてしまいました。これではモチベーションもあがりません。同じレクでも、スタッフの声がけや立ち居振る舞いで参加者の目の色は全然違ってきます。コンテンツの充実を図ることはもちろんですが、進行をするスタッフの育成もしっかり行いましょう。
特にデイサービスでは、ハード面や医療体制などでの他事業所との差別化が難しいため、レクの充実が利用者獲得の大きなPRポイントになります。コロナ禍で落ち込んだ利用者数を回復させる上でも、魅力あるレクの提供は必須と言えるでしょう。