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「高齢者にメイクやネイル」 が、介護職の働き方を変える?

2022.12.26(月)
フリーライター 西岡一紀

広がる民間資格取得の動き

今回は、介護職の新たな「働き方」について考えてみましょう。
最近、メイクやエステ、ネイルケアなど、要介護の高齢者に対して「美」を提供する専門家が増えています。皆さんの中にも「施設のレクリエーションで来てもらったことがある」(今はコロナで難しいでしょうが)という人もいるかと思います。

彼女たちは、肩書は様々ですが、ほとんどの場合は民間法人が主催する講座を受講・修了し、民間資格を持つプロとして活動しています。元々のキャリアは主に「介護・医療職」と「美容関係」の2つに分かれています。つまり、このコラムを読んでいる介護職の皆さんも、メイクやエステの知識や技術を身に付けてプロとして活動するチャンスがあります。

しかし、現在どこかの介護事業者に所属している場合には、仮に資格を得ても活動の場には限度がありました。他法人運営の施設でレクをするのは職場の副業規定に抵触する可能性がありますし、そもそもライバル法人のプラスになるような活動をすることに問題があります。では、自分が所属する法人ならどうでしょう。レクをすること自体は問題はありませんが、そのことで自身の給与が上がることは正直言って期待できないでしょう。つまり、介護職の人がこの資格をお金に変えようと思ったら、退職して、個人事業主などの立場で各施設にせっせと営業をかけなくてはならないのが現実でした。
ネイルケアをしてもらっている女性の手元

在宅への出張エステがケアプランに

女性にメイクをしてもらっている笑顔の高齢女性
ところが、先日、兵庫県で「在宅の要介護高齢者への出張アロマ・ネイルケアがケアプランに組み込まれる」という事例が誕生しました。関係者によると恐らく日本初とのことです。

利用者は80代の女性で要介護度2。夫・娘・孫と同居しており、デイサービスと定期巡回サービスを利用しています。この女性の元に、月に3回・3ヵ月間、2人の担当者が訪問して巻き爪のケアやフット・ハンドトリートメント、リンパドレナージュを提供します。時間は60分ないし90分。もちろん介護保険外サービスなので、60分の場合は8000円、90分の場合は1万円を利用者が支払います。
このように、在宅高齢者に対する保険外の訪問がケアプランに組み込まれるケースが広がれば、訪問ヘルパーなどが資格をとって、介護保険での訪問が無い時間に訪問・施術することが可能になります。自分が勤務する法人にケアマネジャーがいれば利用者開拓の営業は必要ありませんし、勤務先には保険外収入をもたらしますから、自身の給与アップも期待できます。これまでに比べ、介護職の人が資格を保有するメリットが大きく増えました。
もちろん、これが定着するかはまだまだ未知数ですし、肝心のケアマネの認知度も高いとは言えないのが現実です。しかしこうしたケアプランが定着するようになれば、介護職の新たな働き方に大きな変化が生じるのではないでしょうか。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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