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「サンクスカード」のやり取りをもっと活発にさせるには?

2022.11.22(火)
フリーライター 西岡一紀
介護事業者の中には「サンクスカード」(以下:カード)の制度を導入しているところも多いのではないでしょうか。
現場スタッフは、利用者や家族から「ありがとう」と言われることは多くありますが、「自分が具体的にどの程度職場の役に立っているのか」を日々の仕事の中で実感することが少なく、仕事に対するモチベーションの維持が難しいという点があります。また居住系サービスの場合は、同じ職場でも全員が顔を合わせる機会がなく、スタッフの一体感が醸成されにくい点も課題でした。スタッフ間で日々の謝意をやり取りするカードは、それらの課題を解消し、離職防止などの効果が期待できます。
Thank youと書かれた手のひらサイズのカードを持つ人の手

「もらった人」と等しく「書いた人」も評価

とは言うものの、実際にカードの仕組みを効果的に運用するのは意外と難しいものです。
例えば、「カードを書く時間をどのような扱いにするか」という点です。カードは謝意を伝えたい相手がいる場合に書くものですから、全員が必ず毎日書くわけではありません。そうなると「終業10分前からはカードを書く時間とする」など職場として一律に記入時間を設けるのは不自然になります。結果として、終業後や休日、休憩時間などを割いて書くことになります。その結果、「『ありがとう』を伝えたい人たちがたくさんいる」とカードに対して真面目に向き合うスタッフほど、ライフワークバランスが悪化をしてしまう、という矛盾が生まれてしまいます。結果として「カードを書かない方が得だ」という考えが生じてしまい、やりとりされるカードの枚数が徐々に減っているという事業所も散見されます。
また「カードをもらったこと」をスタッフの評価ポイントにすると、スタッフがカード欲しさにスタンドプレーに走りがちです。また「○○さんの仕事を手伝ってあげたのに、カードを書いてくれなかった。ひどい人だ」とかえってスタッフの人間関係にヒビが入ったりするリスクもあります。カードの枚数を何らかの評価対象とする場合は、「送った枚数」も重視する必要があります。

金銭的インセンティブを付与

カードを書いたり送ったりした人を評価する方法として、「カードのやり取り数が多いスタッフにインセンティブを与える」があります。例えば、最近では福利厚生の一環として、職場内にスタッフ向けの飲料や菓子類の無人販売システムを設けている事業所もあります。ここでの買い物について個人のIDカードに紐づけしてキャッシュレス化をしている場合には、「カード1枚につき100円」など、社内電子マネーの一種として使えるようにします。
カードのやりとりが金銭的なインセンティブにつながれば、誰もが積極的に書くようになります。同様のケースとして、半期や通年でカードのやり取り枚数が上位だったスタッフには特別賞のような形で商品券などをプレゼントしているケースもあります。
さらに、カード自体を実際の紙ではなく、社内SNSなどの形でやり取りする様になれば、職場内でなくても通勤中などにスマートフォンをいじりながら記入できますので、より多くのカードのやり取りが見込めます。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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