「リーダーに求める能力」 スタッフと上層部で大きな差
2022.9.27(火)
フリーライター 西岡一紀
スタッフは「指導力」が1位だが…
「KAIGO LEADERS LAB」という介護系シンクタンクが、面白い調査結果を公表していました。(※)
多くの介護現場に「リーダー(チームリーダー)」と呼ばれる立場の人がいると思いますが、そのリーダーに求める能力について、介護業に携わる人たちに尋ねたものです。
一般職やスタッフの回答では「スタッフに助言を行い、成長を促す指導力」が1位になりました。それに対し、当のリーダーでは、この回答は6位となっています。同様に管理者・施設長クラスでは5位、経営者層では実に9位でした。この結果からは、立場が上の人たちはリーダーに指導力を求めていないことが伺えます。
では、彼らがリーダーに求める能力は何でしょうか。リーダー自身、管理者・施設長では「チームのコミュニケーションを推進し、多人数をまとめるチーム構築力」が1位、経営者層では「ビジョンや目標を示す力」が1位となっています。
このように、リーダーの下にいる人たちは、「助言・指導」など「個人対個人」の関係をリーダーに求めるのに対して、上の立場の人たちは「職場全体・会社全体」を視野に入れた行動をリーダーに期待する傾向にあります。
このギャップが、スタッフの職場への不平不満に直結している可能性があります。今回の調査では、一般職・スタッフに「仕事における現在の悩み」も聞いています。1位は「スキル・技術を伸ばす機会(研修や指導など)の不足」でした。つまり、彼らは「もっと指導して欲しいのに、リーダーはちっとも指導してくれない」と悩んでいる可能性が高いのです。
「キャプテン」と「コーチ」は別
ここでスポーツチームを例にしてみましょう。チームにはキャプテンがいます。
キャプテンは、試合に向けて全体のモチベーションを上げる、皆が真面目にトレーニングに取り組む雰囲気づくりをするなど、チームがきちんと機能するように上手くまとめることが求められます。一方、選手一人ひとりに対する技術的・メンタル的な指導をする人としてはコーチがいます。両者の役割は全く別で、必要な能力も違います。
先の調査結果からは、介護事業者の上層部やリーダー自身は、リーダーに対して「キャプテン」の役割を求めているのに対し、スタッフは「コーチ」であって欲しいと考えていると考察されます。そのギャップを埋めるためにも、会社としては「リーダーという役職は何をすべき立場か」を明確にし、末端のスタッフにまで浸透させることが大事です。
そして「リーダーにはキャプテンとしての役割を求める」のであれば、「もっと指導して欲しい」と思っているスタッフのために「コーチ」としての役割を果たす人(メンターなど)を置く必要があるでしょう。
介護スタッフの多くは、もっと技術や知識を学びたいという高い志があります。しかし「リーダーの役割・職務」に対する認識が社内で統一されていないと、「リーダーは何もしてくれない」と不満が強くなり、最悪の場合、離職につながる可能性があります。
※:KAIGO LEADERS LAB.
「介護職の仕事の悩みとリーダーに求める力についての意識調査」(2022年)より

西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。