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高齢者のやる気を引き出す「声がけ」とは

2022.8.26(金)
フリーライター 西岡一紀

入浴やリハビリを「やりたくない」

「○○さん、お風呂の時間ですよ」「嫌だ、入りたくない」
「レクリエーションに行きましょう」「私はいいです。部屋にいます」
高齢者施設では、こうした会話は日常的ではないでしょうか。食事、水分補給、入浴、リハビリテーション、レクなど、ALD維持・改善などのために高齢者にしてもらわなくてはならないことは多いですが、当の高齢者がすんなり従わないことは珍しくありません。
こうした際に、介護スタッフの皆さんはどのような声がけをしていますか。例えばレクリエーションであれば「楽しいですよ」「皆さん参加されていますよ」などではないでしょうか。しかし、こうした声がけは効果的でしょうか。

皆さんも「明日は仕事に行きたくない」と思うことがあると思います(無ければそれにこしたことはありませんが)が、その理由は様々でしょう。「仕事や職場そのものに失望した」という大きな理由もあれば「体調が悪い」「苦手なレク当番になっている」「今日、仕事で大きなミスをして、明日は叱られる」など、個人的な理由もあるでしょう。それに対して「仕事なのだから行かなくてはならない」「それは誰でも感じることだ」という画一的な説得やアドバイスをされて解決するでしょうか。それと同じで、高齢者に対しても適切な声がけをしないと相手は動いてくれません。
では具体的にどのような声がけがいいのでしょうか。
腕組みをして動こうとしない椅子に座った高齢女性

本人のプライドを損ねないように

歩行訓練をする高齢女性に付き添う若い女性スタッフ
一番いけないのは「本人のプライドを損ねること」です。例えば、リハビリを拒む高齢者に対し「頑張れば、歩けるようになりますよ」などです。これは、当人に対して「あなたは歩けない。そして、そのことが問題だ」と言っているのと同じです。これでは高齢者が意固地になってしまいます。

「歩けるようになる」ことを目標にさせるのではなく、「お孫さんの結婚式に行けるようになります」「一緒に甲子園に野球観戦に行きましょう」など、本人が「歩けるようになったらやりたいと考えていること」を把握し、それを叶えるという目標を示してあげることが本人のリハビリに対するモチベーションへとつながります。
モチベーションを維持させるには「ライバル心を刺激する」という方法もあります。
人気タレント「きんさん・ぎんさん」のお姉さん「きんさん」は、以前は自分の足で歩けなかったそうです。筋力トレーニングの結果、歩けるようになりましたが、それを指導した医師は「ぎんさんに負けちゃうよ」という言葉を使っていました。「同じ日に生まれた妹が歩けるのに、自分が歩けないのは…」と本人のやる気を引き出したそうです。
このほかにも「異性にもてるようになりますよ」など、高齢者のやる気を引き出すための「殺し文句」は数多くあります。どの言葉が、その人に「刺さる」かは、その人の性格や趣味、これまで歩んできた人生などにより異なるでしょう。利用者一人ひとりに会った最適な声がけができるかどうかが、介護スタッフとしての力の見せ所と言えそうです。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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