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令和の介護予防は「eスポーツ」で?

2022.7.21(木)
フリーライター 西岡一紀

町の事業として正式スタート

デイサービスなどの介護事業所や自治体が運営する高齢者サロンなどでは、介護予防や身体機能の維持・改善を目的に体操などの様々な活動が行われていますが、そこにも時代の変化の波が訪れているようです。
北海道にある上士幌町という人口5000人の町で、7月より「eスポーツ」を活用した介護予防事業が始まりました。毎週水曜日、高齢者が町の施設に集まって「太鼓の達人」などのリズムゲームを楽しみ、介護予防・認知症予防に繋げていくそうです。
ゲームセンターの「太鼓の達人」で遊ぶ一人の男性
eスポーツなどのゲームは若者が楽しむものというイメージが強いですが、「手先や身体を動かす」「作戦を練るなど頭を使う」「勝利の喜びやクリアの充実感などが心に刺激を与える」ことが介護や介護予防に役立つとされています。ゲーム機器メーカーやゲームセンター運営会社などが介護現場に導入してもらおうと業界に積極的にアプローチをしていましたが、あまり大きな動きにはなりませんでした。
そうした中で、地方の小さな自治体がeスポーツを公的に導入したことは「意外」に感じます。しかし、任天堂の「ファミリーコンビュータ」発売が1983年ですので、現在の60代は、普通にゲームを楽しんできた世代です。また「子どもにせがまれて買ってみたら、自分の方がはまった」という人も多かったでしょう。こうした人はもう70代・80代であり介護サービス利用者の年齢層です。この点を考えても、今後は「デイ・老人ホームでeスポーツ」が当たり前の光景になるかもしれません。

男性利用者増加が見込めるか

さて、このようになった場合、介護現場にはどのようなメリットが生じるのでしょうか。
まずは「男性利用者の増加」です。一般的に言ってゲーム愛好家は男性の方が多いでしょう。どこのデイも男性利用者が少ないことが課題です。「ゲームを楽しめるデイ」は、その解決が期待できます。
次に「スタッフが一緒に楽しめる」です。利用者が若い頃の歌やニュースをレクリエーションに活用する介護事業所は多いでしょうが、利用者の若い頃は50年、60年も前のことで、年長の介護スタッフでも知らない時代です。レクの為に昔の出来事を調べたり、昔の歌を覚えたりするのは介護スタッフの負担になります。それに対し「太鼓の達人」などは、多くのスタッフが遊んだ経験があるでしょう。レク準備の負担軽減だけでなく、利用者とスタッフで共通の話題ができるなど、コミュニケーション活性化にもなります。
そして「新たな人材確保の機会創出」です。介護職は「コミュニケーション力や専門知識が必要」というイメージが強いことが就労への妨げになっていました。それらに自信がない人でも、「好きなゲームに関われるなら」と介護職を志す可能性が考えられます。
もちろん、当の高齢者が「楽しく取り組め」「効果がある」ことが大前提ですが、こうした新たなレクで、現場を変えてみることも検討してみてはいかがでしょうか。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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