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「働きやすい設計」がホームの差別化に

2022.2.17(木)
フリーライター 西岡一紀
先日、ある高齢者住宅のオープン内覧会にお邪魔しました。今回は、その高齢者住宅が導入する「従業員に気持ちよく働いてもらうための工夫点」について紹介します。

ヘルパーステーションで休憩できるか

ここで高齢者住宅を運営している皆さんにお尋ねします。スタッフの休憩スペースはどのようになっていますか?ヘルパーステーションで休憩をしていないでしょうか?
高齢者住宅は、利用者に目が行き届きやすくするため、できるだけ死角が少なくなるように設計されており、ヘルパーステーションもオープンなつくりになっています。そのような他人の目が常に届くような場所で、果たしてゆっくりと休憩できるでしょうか。

また、利用者は、「ヘルパーステーションにいるスタッフは仕事中だ」と思うのが自然です。頼みごとなど何かと声をかけて来るでしょう。それを無視するわけにはいきません。電話がかかってくればその対応もしなくてはなりません。「休憩時間と言っても、実際には休憩できない」のがヘルパーステーションでの休憩です。
ソファに座り休憩しながらスマートフォンを操作する女性介護スタッフ
そして、高齢者住宅には利用者の家族なども出入りします。ヘルパーステーションで休憩している場合、スタッフがスマートフォンをいじる姿などを見て、「仕事中に遊んでいる」と勘違いしてクレームを入れて来る可能性もあります。こうした理由から、高齢者住宅には個室でスタッフがゆっくり休憩できる環境が求められます。
空いている居室をスタッフの休憩室として活用しているケースもあります。これでしたら完全個室であり、邪魔をされず外からの目も気にせずにスタッフはゆっくり休憩できます。しかし、まだまだ休憩環境としては不十分です。
居室はドア一枚隔てて廊下などの共用部と接しています。共用部の音や声も漏れ聞こえてきますから、ある程度は「外でどのようなことが起こっているか」をうかがい知れます。
ここで、スタッフの性格を考えてみましょう。休憩室の扉一枚向こうで「ちょっと誰かの手助けがあった方が助かる」といった事態が起こっている(利用者が不穏になって大きな声をあげているなど)場合に、果たしてそれを無視して休憩を続けられるでしょうか?きっと休憩中でも外に出て手助けをしようとするでしょう。つまり、個室でもその場所によっては、スタッフは十分に休憩できる環境ではないということです。

共用部の音が一切届かぬように工夫

窓の外の景色をゆっくり眺める医療職の女性スタッフ
冒頭で紹介した高齢者住宅では、休憩所は共用廊下の一番奥の「スタッフ専用」と書かれた扉の先にある、倉庫などとして活用されるスペースの奥に個室として設けられています。共用部との間には2枚の扉があり、館内の音や声は全く伝わってきません。誰にも邪魔されず、時間一杯ゆっくり休憩できます。ちなみに、この高齢者住宅では、居室フロアのスタッフ用トイレも同様の場所に設けて、落ち着いて利用できるように工夫しています。

この高齢者住宅の施設長は「今の介護事業者にとって、スタッフをいかに大事するかという姿勢が求められます。ゆっくり休憩できる環境で、スタッフの確保につなげていきます。」と意気込みを語っていました。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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