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介護の現場スタッフを何と呼ぶ?

2021.10.25(月)
フリーライター 西岡一紀

介護士、介護職員、ケアスタッフ・・・バラバラの呼称

介護系のライターをしていて困ることが、「特養や有料老人ホーム、デイサービスなどの現場で利用者の介護をしている人たちをどう表記するか」です。「介護士」という呼び方もありますが「〇〇士」というのは「弁護士」「税理士」など資格の名称です。「介護士」という資格がない以上、正確な呼び方とは言えません。「ヘルパー」も、有資格の訪問介護ヘルパー以外に用いるには違和感があります。「介護職員」では民間企業の社員は対象外となってしまいます。結局「介護スタッフ」「ケアスタッフ」「現場スタッフ」などの言葉を、取材相手や原稿の読み手などに応じてその都度使い分けています。
エプロンをつけてほほ笑む若い男女
こうした悩みは、当の介護事業者も同じようで、事業者により様々な呼称があります。とくに「介護職」「介護スタッフ」だと、募集をかけても応募者が思う様に集まらないという現実からか、「お洒落」「トイレや入浴介助だけが仕事ではない」というイメージを持ってもらうようなオリジナルの呼称を使っているケースが少なくありません。差し障りがあるので具体的な呼称は書きませんが「介護」「ケア」「サポート」などの単語を全く使っていない事業者もあります。
しかし、それは果たして利用者の目線で見た場合に、親切なことと言えるでしょうか。

独自の呼称は利用者の混乱を招く

多くの利用者・家族にとって、介護サービスを受けるのは初めての経験です。地域包括支援センター、ケアマネジャー、アセスメント、サービス提供責任者、特定施設入居者生活介護、介護福祉士、アドバンス・ケア・プランニング・・・などなど、それまで聞いたことが無い言葉が次々と出てきて、理解するのも一苦労です。「介護保険制度がよくわかる本」などの本を買って必死に勉強したりもします。もし、そんなところに、本に書いていない、その会社オリジナルの言葉が出てきたらどうでしょうか?利用者や家族はきっと混乱するだけでしょう。
これを医療業界と比較してみましょう。看護師をメディカルアシスタント、薬剤師をドラッグコンシェルジュなどと呼ぶことはありません。医師、看護師、薬剤師など、どこの医療機関でも呼称は同じです。ですから「この人は何を担当する人」かが利用者にも良く分かり「これは誰に相談すればいいだろうか」とすぐに判断できます。これが結果として業務の効率化にもつながっているのではないでしょうか。
もちろん、特定の職業の呼称を仕事の実態に即したものや親しみやすいものに変更して、今ではそれがすっかり定着したケースはあります。介護業界がそれを目指すこと自体は間違っていません。しかし、定着するには業界全体でのピーアール活動などが重要です(もちろん、それをしたって定着しないケースは沢山あります)。今のような「うちの会社は○○と呼びます」「うちは▲▲と呼んでいます」という状況は、利用者を置いてきぼりにしてしまっているだけではないでしょうか?
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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