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コロナで薄れた社内の人間関係 効果的な回復方法は?

2021.10.7(木)
フリーライター 西岡一紀

ネット全盛時代に敢えて社内報を創刊

ある介護事業者が、新たに社内報を創刊することになりました。今や情報のやり取りはネット上で行うことが一般的になり、新聞などが次々に姿を消していく中で、敢えて紙媒体を立ち上げることに驚きましたが、社長からその理由を聞いて、なるほどと膝を打ちました。

創刊のきっかけは新型コロナウイルス感染症です。介護事業者は小規模な事業所を多数運営する形態のところが少なくありません。したがって1人の従業員が日常的に接する社内の人間の数は多くはなく、日々の業務では会社全体の仕組みや動きを知ることがなかなか出来ません。特に中途採用の従業員は、採用活動を各事業所で行う場合には「本社に行ったことがない」「社長に会ったことがない」というケースもあります。当然、会社への帰属意識も低く、それが離職率の高さの一因にもなっていました。
室内でインタビューを受ける女性社員
これまでは、それをカバーする方法として、事業所の枠を超えた集合形式の研修などがありましたが、今はそれもままなりません。こうした中で、従業員が他の事業所や会社全体のことを知る機会を作り、帰属意識を高めることが社内報を創刊の目的です。
「でも、それならば、SNSなどのネットでやればいいのでは?」という疑問が生まれます。これについて「紙媒体でなくてはいけない理由」を社長は2つ掲げます。
まず、従業員の中にはパソコンやスマートフォンを持っていない、持っていても苦手な人などがおり、ネットでは全員に情報が行き渡らない可能性があるという点です。それに対して紙媒体であればどのような人にでも情報を届けられます。

ネット=日常 新聞=非日常

一眼レフのカメラを構えた女性の手元
もう一つが「掲載された場合の喜びの大きさ」です。皆さんの中にはFacebookやTwitter、YouTube、ブログなどで自分のことを発信している人も多いでしょう。これからもわかるように、ネットの最大の利点は「誰でも、簡単に発信者になれる」点です。しかし、裏を返せば「ネットに登場したり、ネットで紹介されたりすることも簡単」ということです。ネットに出たことは本人にとっても特別な体験ではありません。

それに対して、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などは「発信する側」の数が非常に限られています。だからこそ「テレビに出演した」「新聞に掲載された」が、一般の人ではなかなか経験できないこととして大きな喜びになるのです。
「例え社内報という身内のメディアでも、自分がインタビューされ紙媒体に載るのは、晴れがましいことであり、承認欲求も満たされます。そのことはモチベーションの維持・向上の面でも大きな効果があるでしょう」と、社長は語ります。ですから、この社内報がスポットを当てるのは、日々介護の現場で働いている従業員です。また、インタビューされるという特別感をより感じてもらうため、インタビューや撮影は外部のプロに委託しています。
もちろん、こうした取り組みを行うには制作・印刷などコストがかかりますが、相応の効果も期待できそうです。皆さんの会社でも一度検討してみてはいかがでしょうか?
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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