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高齢者のオンライン体操・レクリエーションの可能性

2021.9.10(金)
フリーライター 西岡一紀

動画の配信だけでは一方通行に

日本で新型コロナウィルス感染症が広がりを見せるようになって1年半以上たちます。この間、デイサービスや自治体などが運営する高齢者サロンの中には感染拡大防止の観点から休止する所が出たり、高齢者自身が利用を控えたりする動きがあったりで、高齢者の外出・運動機会が大きく減りました。この結果、高齢者の運動機能が低下したり、認知症が進行したりすることが社会問題になっています。
そこで、自治体などが、自宅で出来る体操の動画を地元ケーブルテレビやYouTubeなどで流して高齢者の運動機会を確保する取り組みを行っています。しかし、単に動画を流すだけでは一方通行となり、リアルな双方向コミュニケーションが図れないため、高齢者が本当に効果的に体を動かしているかどうかを確認できない、高齢者のやる気を引き出して運動を習慣づけることが難しい、などといった問題がありました。
自宅でヨガをする高齢男性
こうした中で、オンライン会議システムなどを活用して、リアルタイムで画面越しにインストラクターが運動を指導する手法に注目が集まっています。例えば、山形県では県内4カ所の「通いの場」でオンラインを活用した介護予防体操やレクリエーションのモデル事業が7月より行われています。また、大阪府池田市でもオンライン受講型の介護予防プログラムが始まりましたし、大阪府東大阪市でも10月から3ヵ月間、インストラクターと参加者を直接つないだオンライン体操講座を実施します。

高齢者でもICT機器の活用は可能

こうした取り組みの実施に際しては、「高齢者の自宅がインターネットを使える環境ではない」「高齢者はパソコンやタブレット端末などを持っていない、利用できない」ことが大きなネックと言われてきました。しかし、昨年夏に高齢者30人に対して「オンライン通いの場」のモデル事業を行った静岡県の報告書によると「高齢者にタブレット端末を貸与して事業を実施したが、端末の初期設定を事前に行い、使用方法を説明するなどのサポートを行えば、高齢者でもICT機器の活用は可能」と結論付けています。私たちが思っている以上に、「オンラインで体操・レクリエーション」は身近な存在になり得るといえるのではないでしょうか。前述した東大阪市の体操教室も予めネットに接続したタブレット端末を貸与して実施するそうです。
高齢者住宅でも、「集団形式での体操やレクリエーションは感染リスクが大きい」として少人数のグループに分けるなどして実施しているところもあるでしょう。しかし、全員にそれを行うには結果的に多くの回数をこなさなくてはならず、スタッフの負担が大きくなってしまう問題がありました。それに対し、オンラインをうまく活用すれば、フロアごとに少人数グループを集め、複数フロアが同時に行えるだけでなく、居室にいる高齢者も、他の高齢者住宅やデイサービスの入居者・利用者も一緒に参加できます。密を避けながら同時に体操・レクを行える一手法として、オンラインの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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