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スタッフに介護以外の資格取得を推奨

2021.8.25(水)
フリーライター 西岡一紀

離職者を通じて自社の魅力アピール

先日取材した関東のある介護事業者は、介護スタッフが介護以外のスキルや資格を取得することを推奨しています。例えば送迎ドライバーも含めて約110人のスタッフのうち20人が、音楽レクリエーションの専門家の民間資格「音楽健康指導士」を保有しています。受講に際して必要な費用は全て法人側で負担しました。また、受講時のテキストを元に法人オリジナルのテキストを作成して知識や情報を共有し、資格を持っていないスタッフでも有資格者と同水準の音楽レクリエーションを実施できる環境を整えています。このほかにも「笑いヨガ」などをスタッフが積極的に学んでいるそうです。
こうした取り組みを行う理由について、この法人の理事長は「スタッフが他社に転職したときに『さすが○○で働いていた人は優れている』と言ってもらえるようにするのが狙いです」と語ります。
笑顔で写る介護スタッフ女性
どこの介護事業所でも、スタッフ不足が深刻な中で「少しでも離職を食い止めよう」と必死になっています。面談をしたり、処遇改善をしたりと様々な手を打っていますが、離職の理由の中には結婚・出産・配偶者の転勤などの家庭の事情や、本人の健康問題などもある以上、離職を絶対にゼロにすることはできません。介護を含むサービス業全体の離職率は年間で20%程度言われており、この程度の離職者が出ることは企業としても想定しておく必要があります。
離職者が転職先で高いスキルや専門的な知識を活かして八面六臂の活躍をすることで、「あの人がいた会社はどんな人材教育をしているのだろう」と業界内で話題になり、中には「あの会社で働いてみたい」と思う人も出て来るでしょう。実現が難しい「離職ゼロ」のために企業として多額のコストと手間をかけるのであれば、「離職者に会社の宣伝塔になってもらおう」と考えるのも経営上の選択肢の一つと言えます。

介護の知識・技術は自然に身に付く

また、介護以外のスキルや資格の取得を推奨するにはもう一つの理由があります。大阪府内のある介護事業経営者は「介護職ならば介護に関する知識や技能があるのは当たり前。そして、それに対する評価は国が介護報酬として定めている。それ以上の評価を得ようとしようと思うなら、介護以外の部分の能力を磨くという考えが必要ではないか」と語ります。
多少ドライな考え方ですが、確かに介護業界の中には介護に関する知識や技能を重視するばかりに、接遇・サービス精神・コミュニケーション能力・社会人としての常識などに欠ける人がいるのも事実です。介護に関する知識や技能は日々現場に入っていればある程度のレベルまでは自然に達することができます。しかしそれ以外の部分は当人の「学ぼう」という意識がないとなかなか向上しません。そこを人事の評価軸に据えるという考えは理にかなっている部分もあるのではないでしょうか。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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