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何かを模すなら、とことん本格的に

2021.7.29(木)
フリーライター 西岡一紀

デイサービスではなく「学校」

特にデイサービスに多いのですが、「ハワイをイメージ」「お洒落なカフェ」など特定のコンセプトで企画・運営されている介護事業所があります。一般の人向けの店舗でいえば「メイドカフェ」や「動物と触れ合えるカフェ」、各種テーマパークといったところでしょうか。

こうした店舗やテーマパークの場合には「どれだけ本格的か」が人気を分けます。例えばメイドカフェなら、「スタッフがどこまでメイドに徹することができ、非現実的な空間を提供できているか」です。介護事業所も同様です。「お洒落なカフェ風」を打ち出しているのに、デイサービスだからとスタッフがポロシャツに下半身ジャージ姿では雰囲気は台無しです。「どうせやるなら、とことんこだわる」ことが大事なのではないでしょうか。

ハイビスカスと古い建物の写真
例えば、デイサービスや老健の中には「学校」をコンセプトにしたところがあります。元々介護現場では、認知症予防・進行防止を目的に、利用者が簡単な計算問題や漢字書き取りなどをするケースが多くありました。「どうせ勉強をしてもらうなら、本格的な学校にしてしまおう」と考え、黒板など学校の教室を再現した空間を用意し、スタッフは教師らしくジャケットを着用して授業を行います。日直を決めて、その名前を黒板に書いているあたりも「学校そのもの」です。また、老健の場合には、在宅復帰をするときには「卒業式」を行い、家族を招いて卒業証書を授与します。
学校に通った経験は全ての人が持っているため、共通の話題も生まれやすく、回想療法にも繋がります。また、「デイサービスに通う」ということには抵抗感を持つ高齢者も「学校に行きましょう」と呼び掛けると、素直に通うなどの効果も期待できます。

カジノゲームで、男性に人気

カジノのチップとトランプの写真
「本格的」といえば、少し前に話題になった「カジノデイサービス」もあげられます。一部の自治体が「カジノゲームをすることに介護保険給付は認められない」と開設を拒否するなど、賛否両論がありました。しかし、私は実際に見学をしてみて「非常にいい取り組みだ」と実感しました。

デイサービスや高齢者住宅の中には、利用者に楽しんでもらおうと麻雀卓やパチンコ台などを置いてあるところもあります。しかし、残念ながら他の利用者がカラオケをする声が聞こえてくる場所に設置されているなど「ゲームに没頭できる環境」ではないことが少なくありません。麻雀やパチンコに限らず、映画やスポーツ、食事などは「それを楽しめ、集中できる空間づくり」が求められます。
その点で言えば、カジノデイでは、ポーカー台やルーレット、チップなどはラスベガスなど本物のカジノで使用されている物を使っています。スタッフのユニフォームも本物のカジノを思わせるデザインです。中で提供される食事も、ハンバーガーなどカウンターやゲームをしながら手軽に食べられるメニューを提供しています。この様に本物のカジノや雀荘などと全く変わらない環境を用意することで、「デイサービスでみんなと一緒にうたを歌ったりするのは嫌だ」などと考える男性利用者の取り込みなどに成功しています。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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