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隠れた人材を上手に活用

2021.7.15(木)
フリーライター 西岡一紀

1日1時間から就業可能

今回は、人材確保でユニークな取り組みをしている介護事業者の例を紹介します。 介護業界の人材不足の解消に向けては、処遇改善や高校生・中学生などに向けた介護の仕事の魅力を伝える取り組みなど、官民問わず様々な施策が行われていますが、一向に改善する兆しが見えません。日本の生産年齢人口(5歳から65歳未満)は26年前がピークで減少を続けており、他産業との人材の奪い合いは今後も続くでしょう。
マンションの入り口に設置された集合ポスト
こうした状況で、介護事業者の中には「これまで採用対象として想定してこなかった人材を新たな対象にしよう」という考え方が広まっています。例えば、ある大手介護事業者では「今の時代、1日8時間働ける人を1人確保するのは困難。それに代わり1日1時間働ける人を8人採用する」との考えのもと、非正規雇用者を積極的に活用しています。
「1日1時間働ける人」と聞いて、皆さんはどのような人材を思い浮かべるでしょうか。高齢者や小さな子供がいる母親などが一般的ではないかと思いますが、この介護事業者では、いわゆる「ニート・引きこもり」を中心に考えています。彼らは心理的な問題などから、組織の中で働くことが難しいといった問題を抱えています。「何とか今の状況を脱して、働きたい」という意思がある人に「まずは1時間だけでも働いてみよう」と思わせ、それを可能にする環境を用意しています。もちろん、慣れるにしたがって勤務時間を伸ばしていき、最終的には正規雇用につなげていくことを目指します。
また、この介護事業者では、非正規雇用が正規雇用に対して不利になることが無いように、「同一労働同一賃金制」を以前より導入し、全ての非正規雇用者を無期雇用契約にしています。加えて、本人の希望に応じて正規雇用から非正規雇用になること、そこから再び正規雇用になることも簡単に行えます。本人や家庭の問題で正規雇用で働くことが難しくなった場合には一次的に非正規雇用となり、その問題が解消したら正規雇用に戻ることができるため、離職を減らすことにもなります。

LGBTQが働きやすい環境を実現

これと同様に、「LGBTQ」と呼ばれる性的マイノリティーに注目している介護事業者もいます。一説によると「LGBTQ」の方は13人に1人程度の割合でいると言われており、決して珍しい存在ではありません。しかし最近まで、就職先はいわゆる「夜の街」など一部に限定されていました。その理由としては、LGBTQに関する企業側の理解不足に加え、本人が自認する性と肉体的な性を合致させる手術のために、まとまった休みを複数回取得しなければならず、正規雇用で働くことが難しかったことがありました。
こうした事情に対し、ある大手介護事業者は。今年4月から、LGBTQの方が性別適合手術を受ける場合、月に2日まで有給休暇を取得できる制度を新たに導入しました。しかも勤続年数に関わらず、誰でも取得できるそうです。
世間には、肉体面・体力面・職務遂行能力面が十分であるにもかかわらず、様々な事情により「求職市場」に出てこない人材もいます。こうした方々が十分に能力を発揮できる環境を整えることも、人材不足解消の一方策と言えそうです。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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