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「より豊かに・便利に」生きる知恵を与える

2021.5.27(木)
フリーライター 西岡一紀

地域高齢者にメルカリをレクチャー

高齢者が有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居する場合にネックのひとつになるのが「家財の整理」です。価格帯にもよりますが、高齢者住宅の居室の広さは18平米~25平米程度のことが多く、現在使用している家財道具・家電製品などの殆どは物理的に持ち込むことができません。処分をしようにも、地方では身近にリサイクルショップなどが少ないなど、車が運転できない高齢者では難しい面があります。自宅を売却したお金で入居資金を賄おうという場合は、家財道具の処分が進まないために家も売れず、結果的に入居ができないケースも珍しくありません。
洋室にあるソファと食器棚とダイニングテーブル
こうした課題に対し、大阪府内の介護事業者が面白い取り組みを行いました。若い人たちの間ではすっかり生活に馴染んでいるフリーマーケットサイト「メルカリ」の使い方を地域の高齢者に教える、というものです。メルカリの社員が講師となり、登録方法から実際の出品の仕方、売れた場合の対応まで教えたそうです。
リサイクルショップや買い取り事業者では、対応可能な物に限りがありますし、業者は買い取った物に利益を乗せて転売しなくてはならないため、買い取り価格はどうしても安くなります。それに対してメルカリのような個人間売買でしたら、どのような物でも売れる可能性がありますし、売り値が高くなる可能性も多くなります。

スタッフに「財テク」の知識を

この介護事業者は、他にも「自社のスタッフに財テクを学んでもらう」というユニークな取り組みを行っています。
介護業界の人手不足の一因に「給与の安さ」があります。国も介護報酬に特別の加算を設けるなど、近年は介護人材の処遇改善に力を入れており、以前に比べると給与水準は上がってきています。しかし、それでも大手企業で、介護福祉士の資格を持ち、月に何回も夜勤をこなしてやっとサラリーマンの平均所得額に届くかどうか、といった水準です。介護保険サービスは提供側が価格を勝手に決めるわけにはいかないので、保険外サービスや介護以外の事業強化などのようにビジネスモデルを大きく変えない限り収益性は変わらず、従業員の処遇改善にも限界があります。
そこで、この会社が考えたのは「年間600万円の給与額を出すことはできない。しかし300万円を600万円に増やすテクニックを教えることはできる」ということです。特定の投資商品を勧めることはしませんが、ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家を講師に招いて向けのセミナーを行い、従業員に「自分の力で資産を増やす」という考え方を身に着けてもらっています。
世の中には、生活を便利に・豊かにするツールは沢山あります。しかし、それらについて十分な知識があり、使いこなせている人は多くはありません。入居者に「おいしい食事を提供する」「楽しいレクリエーションをする」だけがサービスではありません。従業員の「休暇を取りやすくする」「労働時間を短くする」だけが処遇改善ではありません。「豊かに生きるための知識を与える」ことも、彼らへのサービスになります。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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