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「誰かの役に立ちたい」欲求を叶える

2021.4.14(水)
フリーライター 西岡一紀

増える「働く」がコンセプトの施設

これまで介護事業所に対し「ダメ出し」ばかりしていましたが、少し趣向を変えて、皆さんに是非とも参考にしていただきたい、優れた取り組みや考え方を導入している事例を紹介したいと思います。
高齢者の方に「何歳まで働き続けたいですか?」というアンケート調査をすると「働ける限り」という回答が少なくありません。「働きたい」。これは多くの高齢者が希望していることです。その理由としては、単純に「お金が欲しい」もあるでしょうが、「世の中の役に必要とされる存在でありたい」という承認欲求や、「介護や認知症の予防・進行防止になる」といったこともあります。そして、介護事業所の中には、これらの希望を叶えるため、利用者が「働く」ことをコンセプトにしているところがあります。
多くは、事業所の手伝い、例えば配膳や下膳、洗濯物を畳む、掃除などをすると、クーポンの様なものがもらえ、貯めた額に応じて、お菓子や日用品と交換できたり、スタッフと1対1で好きな場所に出掛けられたり、という様々なサービスを受けることが出来る、という仕組みです。
この仕組み自体は、良いものだと思います。しかし、まだまだ工夫の余地があるのではないでしょうか。例えば仕事の内容です。「働きたい」と多くの高齢者は思っていることは間違いありません。しかし、したい仕事は果たして「配膳」や「洗濯物畳み」でしょうか?

利用者に「施設内ビジネス」義務付け

例えば、私は四半世紀近く「文章を書く」ことを生業にしてきました。仮に、将来高齢者施設に利用者の立場で何か仕事をするにしても、自分が好きな「施設内新聞の制作」などを第一に希望するでしょう。他の高齢者も同様ではないでしょうか。今の様に転職が当たり前ではなかった時代を過ごして来ました。50年近く同じ仕事を続けてきた方も多いでしょう、女性が働くことは今より一般的でなかったですが、その分、専業主婦としてスタッフの誰よりも長いこと家事を行ってきたはずです。同じ働くなら、そうした自分の得意分野、技術、知識が活かせる仕事の方がずっと楽しく、前向きに取り組んでくれるはずです。
ミシンを使う高齢者女性の手
例えば、青森県の社会福祉法人が運営するデイケアでは、利用者は施設の一画を利用して「自分の好きなことで商売をする」という決まりです。元技術者の男性は他の利用者の車椅子など修理する工房を開設しています。手芸が得意な女性は、自作のアクセサリーを販売する店をしています。自分の畑で採れた野菜や果物を売っている人もいます。これらの商売は全て館内通貨を使用して行われます。「自分は何も特技が無い」という利用者は、館内通貨を預けたり引き出したりする「施設内銀行」の行員の仕事があります。こうして利用者自身が、自分の特技や経験を元に働く内容を決めることが、結果的に本人の生きがいとなります。広いスペースが確保できる地方だからできるという面もありますが、非常に面白い取り組みといえます。
次回も、「働く」をテーマにした好事例をいくつか紹介します。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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