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商品・サービスを評価するのは消費者であり経営者ではない

2021.2.15(月)
フリーライター 西岡一紀

大企業を否定しがちな介護業界

外食や小売りなど一般消費者を対象にする業種には、全国展開する大手チェーンから個人経営店まで様々な規模の事業者が存在します。そして、ときに大手チェーンについては「味やサービスが良くない」などという印象がついてまわることがあります。介護業界は特にその傾向が強いようで、私も地域密着で展開する介護事業経営者と話をしていると、相手は大手事業者の悪口に終始していることがよくありました。
マルバツの札を持つ高齢女性
ある日、私は30床の有料老人ホームを1棟だけ運営する介護事業会社の経営者と話していました。この会社は「家庭的なサービスを提供している」というのが自慢でした。そして当時約8000室の高齢者住宅を運営していた会社(以下A社)のことがよほど嫌いと見えて「サービスの質が悪い」など、口角泡を飛ばして批判していました。
私はしばらく黙って聞いていましたが、相手の発言がひと段落したところでこう切り返しました。
「A社の入居者は約8000人、それに対して御社は30人。どちらが多くの高齢者やその家族を救っていますかね?」
「もし、A社のサービスが劣悪なら、なぜ8000人もの人がA社を選んだのでしょうか?A社の高齢者住宅は入居するのにそこそこの費用がかかりますから、そこに入れる人なら、他にも入居の選択肢はあるでしょう。いくつもある中からA社の高齢者住宅を選んだのですから、A社はそれだけ多くの人に支持されているということではないでしょうか?」
「あなたの会社が『家庭的なサービス』を売りにするのはいいことです。しかし世の中には『あまり世話を焼いて欲しくない』という人もいます。そのニーズに応える高齢者住宅も必要です。自分が理想とするサービスと違うからと言って、その企業を批判するべきではないと思います」
「そもそも、もしあなたの掲げる介護サービスがベストであるならば、なぜあなたの会社は、何年たっても有料老人ホーム1棟だけなのでしょうか?たちまち評判になり、利用希望者は殺到、金融機関も融資を申し出て、会社は大きくなるのではないでしょうか?」
少し、言い過ぎたかなとも思いましたが、相手はこれに対して一言も返せませんでした。

企業の規模が大きい=支持者の数

この手の話をすると「会社の規模が大きくなると、サービスの質が低下するから」と企業規模の拡大に否定的なことをいう経営者もいます。しかし「規模が大きくなってもサービス品質が低下しない方法」を考えるのが経営者ではないでしょうか。また、普通に考えて、会社の規模が大きくなれば、人や情報や資金が多く集まり、それらを基に新たな商品・サービスが生み出されますから、サービス品質はむしろ向上するはずです。
介護業界の経営者の中には、「困った高齢者を助けたい」という使命感や正義感が強いあまり、「自分たちの考えが絶対的に正しい。ほかの介護会社は劣悪」と考え、自社社員が交流会などで他社の社員と接することすら禁ずる人もいます。しかし「その企業の良し悪しを判断するのは消費者」です。企業の規模が大きいということは、それだけ「消費者に支持されている」ということです。盲目的に大企業を批判するのは無意味なことです。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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