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自分が提供する商品の値段把握するべき

2020.12.9(水)
フリーライター 西岡一紀

「自分がいくら売り上げたか」に無関心

 以前、大手介護会社が運営する特定施設で6年間正社員として働いていた人と話をする機会がありました。私が「会社から、特定施設の介護報酬がいくらか教えてもらいましたか」と聞くと、彼女は「1回も教えてもらったことがありません。今でも知りません」と答えていました。彼女は介護福祉士の資格も持ち、施設ではサブリーダーだったそうですが、そうした立場のスタッフですら「自分が販売している商品・サービスの値段を知らない」ことに驚きました。
利用者に笑顔で寄り添う介護職員
 これは、他の業界では考えられないことです。例えばカフェのスタッフならば、アルバイトの高校生だってコーヒーの値段ぐらいはすらすらと答えられます。理美容師やエステティシャン、マッサージ師などのようにマンツーマンでサービス提供をする人たちならば、「料金×利用者数」で、自分が1日・1週間・1ヵ月でどれぐらいの売り上げを上げたかすぐに計算できます。そして「自分の給料分すら売り上げられていない」ということがわかれば、馴染み客に声をかけて来店を促したり、キャンペーンを行ったりして売り上げを増やそうと努力をします。それが企業の成長・発展の原動力となります。

空室1室で自分の給料1か月分以上がとぶ

 もちろん介護事業はケアプランに基づくサービス提供ですので、これらの一般的なサービス業とは単純に比較はできません。しかし、働くスタッフが「特定施設の介護報酬は月に約30万円」ということを知っていれば、「空室が一つあることで自分の給与1カ月分の売り上げが入ってこない」(実際には家賃や管理費、食費なども入ってきませんから、給与2カ月分ぐらいの売り上げが失われることになります)ということを認識できます。そして、そうした空室が長期間続く状況に「何とかしなくてはいけない」という危機感を持つことができます。その危機感に対し、飲食店やサービス店の様に、路上でチラシを配ったり、クーポン券を発行したり、といった直接的な行動はできませんが「施設見学に来た方がいい印象を持つように、挨拶をしっかりしよう、身だしなみを整えよう、清掃を丁寧にしよう」「家族の知人などで介護が必要な人がいないか聞いてみよう」という行動変容につながります。
 あるデイサービス(1日型)では「1人利用者が来てくれることで、デイサービスに入って来るお金は約1万円。有名テーマパークのチケットよりも高い」とスタッフに説明し、「有名テーマパークに遊びに来るよりも多くの感動を与えないといけない」ということを意識させているそうです。「自分の接客やサービスは、有名テーマパークを超えているだろうか」このことが常にスタッフの行動の基準になっています。
 「自分が働いている会社は、どのような仕組みで経営が成り立っているのか」を知ることは非常に重要です。介護の世界では、「経営層や管理職以外のスタッフはお金のことを考えることはよくない」という風潮が強くありました。もちろん、現場のスタッフは財務上の細かい数値まで知る必要はありません。しかし、あまりに基本的な部分を理解していないと「お客様をお客様と認識できずにぞんざいに扱ってしまう」「売り上げに繋がらない業務にばかり力を入れている」など、会社にとってありがたくない行動ばかりとる社員が育ってしまいます。
西岡一紀(Nishioka Kazunori)
フリーライター。
1998年に不動産業界紙で記者活動を開始。
2006年、介護業界向け経営情報紙の創刊に携わり、発行人・編集長となる。
2019年9月退社しフリーに。現在は、大阪を拠点に介護業界を中心に活動中。
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